THINK OF THINGSでは、1月16日(木)より、ヨーロッパ6カ国を旅して見つけた、どこか愛おしい生活の品が並ぶポップアップイベント「Cuddly Things(カドリー シングス)」を開催しています。 今回のポップアップに併せて、元THINK OF THINGSスタッフで本イベント企画者の磯部有規さんにお話をお聞きしました。
― 今回、北欧などヨーロッパ6カ国の旅をされることとなったきっかけはあるのでしょうか。また実際に滞在してみて、感じたことなどはありますか? 北欧の人たちは、毎朝8時頃から仕事を始めて夕方には早めに仕事を切り上げ、仕事をきちんとしつつも、家族や生活をとても大切にしているというイメージがあり、数日間だけの旅行ではなく、もう少し長く滞在することでそういった空気を感じてみたくて、夏から秋に掛けての約2ヶ月半を向こうで過ごしました。 実際、平日休日関係なく、パパもママも近くの小さな公園で子どもたちと遊んでいたり、街中でよく見られる芝生だけが広がる公園では、家族や友達、カップルなどがシートを広げて、何をするでもなく、思い思いの時間を過ごしているのをよく見かけました。 また、1ヶ月ちょっとを過ごしたデンマークのコペンハーゲンでは、毎週末、蚤の市が行なわれていて、各日大小に限らず20ヶ所くらいの場所でフリーマーケットが開催されていました。そこでは、家族や友達と一緒に出店する人たちが、それぞれ必要なくなったものを持ち寄って売っていて、フリーマーケットへの出店も休日の過ごし方のひとつになっているんだなと。「必要がなくなったものはすぐに捨てるのではなく、誰かに使ってもらおう。」「自分が必要なものは、新しいものを買いに行くのではなく、フリーマーケットで見つけよう。」という考えが日常の一部になっているように感じました。 そして街には必ずひとつはあると言っていいほど多くのセカンドハンドショップがあり、いろんな日用品が所狭しと並んでいました。そこには親子が普通におもちゃを買いに来ていたりするし、おばあちゃんやおじいちゃんたちがお店に立っているところが多くて、どこも特別おしゃれなお店という感じではないのですが、スケボーを抱えた若者たちも普通にお店に入っていくのを見て、とても衝撃を受けたのを覚えています。
私にとって、アンティークショップというと、少し手に取りにくく高価なイメージがあり、リサイクルショップというと、安くて少し汚れているというイメージがあり、どちらのお店にも日本では気軽には入りにくく、日常的に訪れる場所ではありませんでしたが、海外生活の中でこういった文化に触れて、改めて、新しい物に限らず、ずっと使われてきた物たちに良さを見つける楽しみを覚えました。 誰かの日常にあった物たちには、シンプルな物でもよくよく見ると特徴があったり、手仕事でつくられた物は、同じ物が並んでいてもかたちや着色の具合がほんの少し違っていたりと、見れば見るほどなんだか愛着が湧いてきます。新しい物にはない少しかすれた色や使われてきたからこその風合いのようなものも愛おしく思えてきます。 そんな物たちが並ぶ今回のイベントに、“Cuddly(カドリー)”=「可愛らしい(愛らしい・愛嬌のある)」という単語の付いた、「Cuddly Things(カドリー シングス)」というタイトルを付けました。
― 物を選ぶときは、どんなふうに選ぶことが多いのでしょうか。 直感で「これ、かわいい!」と手に取ることが多いです。蚤の市やセカンドハンドショップには、本当にたくさんの物が並んでいますが、その中から、「これだ!」と思うものが見つかるときがあります。それを見つけたときの喜びは何ものにも代え難くて、この瞬間のために蚤の市に出向いているといっても過言ではありません。手にした後にもう一度じっくり見ていると、「あぁ、ここに惹かれたんだな。」というポイントが見えてくる感じです。 THINK OF THINGSのコンテンツの「Found Tools」や「Good Packs」などのアイテムをセレクトするときにも、同じような感覚がありました。それぞれの企画趣旨にあったものを探していくというのはもちろん、最初は感覚的に惹かれるものを選ぶことが多いのですが、アイテムとして紹介をするにあたって、物をじっくり見たり、調べていくと、細部の造りや物が作られた背景が見えてきて、そのものに対する愛着のようなものが深まっていきます。 私自身、日々SNSなどからいろいろな情報が流れてきているのを目にして、物を選ぶときにも知らず知らずのうちに、他の方の評価や周りからどう見られるかというのを気にしてしまっていることがあったように思います。今回の滞在では、毎週末、その場で実際に物を見て触れていたことで、本来自分自身が好きだったものを思い出せたような気がしています。今回集めた物たちは、自分では比較的シンプルであまり特徴がないものが多いと思っていましたが、私の知人からすると「私らしい」セレクトなようで、その言葉にも少し驚き、うれしく思いました。
― 今回のポップアップで展示・販売するアイテムについて教えてください。 今回のポップアップでは、私が昨年の夏に北欧などヨーロッパ6カ国を、約2ヶ月半旅して出会ったものたちを展示・販売しています。それぞれの蚤の市で、「なにか1つ良い物を見つけよう。」と毎週末のように出掛け、たくさんの物の中から心惹かれた物たちを少しづつ持って帰ってきました。どの物にも、手に取ったシーンやお店の人とのやりとりが思い浮かび、手元に置いておきたいものばかりですが、その時の思い出を共有しながら、また次の方にお譲りできたらと思っています。 ぜひ店頭で実際に手に取って触れて、現地の蚤の市で物を手に取るような感覚を味わっていただければと思います。在店時にはお越しいただいた皆さんと一緒に、集めてきた物たちを見ながら好きなポイントをお話しして、共有し合えたりできたらうれしいです。 また、今回のポップアップに併せて、大切に集めた物たちを一つずつご紹介したZINEも制作しました。どんな場所でどんな風に手にした物なのか、どこに惹かれたのかなどを少しずつ書いたので、物たちと併せて見てもらえるとうれしいです。 デザインは、友人であり、オランダ・アムステルダム在住のグラフィックデザイナーの樋口舞子さんにお願いしました。旅先でも互いの予定の合間を縫ってお茶をしましたが、帰国してこの企画を考え始めたとき、ヨーロッパの雰囲気を纏った今の彼女にデザインをお願いしたいと思い、連絡をして快諾してもらいました。
“Cuddly Things”のロゴマークには、既存のフォントを使用するのではなく、プレーンなテキストを敢えて崩してまた再構築することで、量産されたデザインではない一点物のデザインのような愛着の持てるものにできたらという想いが込められています。 またZINEについても、布を貼ったりスタンプを押したりすることで、今回の旅で見つけた物たちのような手仕事の雰囲気を持ったものになればと、カバーの製本テープのような仕様は手仕事で一つひとつ制作しています。このZINEも、物として部屋に飾っておきたくなるような仕上がりになりましたので、ぜひお気に入りの物と併せてお部屋にお迎えいただければと思います。 POPUP「Cuddly Things」 期間:2025年1月16日(木)〜1月28日(火) 場所:THINK OF THINGS 1F CASE Cuddly Things Instagram:cuddly_things_ 磯部 有規 YUKI ISOBE プランナー/プロジェクトマネージャー 大学でプロダクトデザインを学び、ブランディングに特化したデザイン事務所を経て、街や場に関わるコンセプトメイク、プロジェクトを手掛ける事務所へ。現在フリーランス。 THINK OF THINGS在籍時には、店頭での接客も行いつつ、POPUPや「Found Tools」の企画運営を行ない、「Good Packs」の企画を手掛ける。