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Fulcrum

Text: Yuki Isobe / Photo: TOT Staff、Fulcrum

2024.3.20

THINK OF THINGSの入り口にあるポップアップスペース“CASE”では、3月14日(木)より、建築板金における最小限の加工「切る」「折る」から生み出されたプロダクトを展開するライフスタイルブランド「Fulcrum(フルクラム)」のポップアップショップを開催しています。 今回のポップアップショップに併せて、Fulcrumのディレクターである森元さんに、ブランドやアイテムについてお聞きしました。

― このブランドを立ち上げた経緯を教えてください。 僕の実家は、金属板を加工して建物の屋根や外壁を施工する建築板金業をしている有限会社森元という会社で、物心ついたときから、ものづくりの現場を近くで見てきました。 神戸芸術工科大学で家具づくりを学んで、改めてうちで作っている物の格好良さに気付きました。まっさらな鉄板からパーツを造り出していく様は、本当に格好良いんですよ。 大学卒業後は、工房で受注生産の家具を制作していたんですが、日に日に自分自身のブランドを持ちたいという想いが強くなっていきました。もともと家業を継ぎたいという想いもあり、森元という会社として新しい取り組みができたらと考えていて、板金加工の技術を使った家具を作ることができないかと思い立ち、このブランドを立ち上げることになりました。

―「Fulcrum」というブランドについて教えてください。 “Fulcrum”は、「支点」や「支柱」という意味を持つ単語です。鉄板を折るときにも、支点を中心に折っていきますが、板金加工したパーツをデザインや構造の要として展開しているこのブランドを、私たち森元という企業も支えていくようなブランドに育てていきたいという想いも込めています。 今回店頭に並んでいる「Hi.series(エイチアイシリーズ)」と「Baguette shelf(バゲットシェルフ)」のデザインは、大学時代にもお世話になり、同じ工房で家具制作をしていた家具デザイナーの池内宏行さんにお願いしました。デザインや物に対する考え方に共感するところが多く、Fulcrumの最初のシリーズは池内さんにお願いしたいと思っていました。 ブランド立ち上げ当初からFulcrumはデザイナーと森元の技術を掛け合わせたブランドにしていきたいと思っていて、今後もいろんなデザイナーさんとタッグを組んで、板金加工技術を活かしたものづくりをしていきたいと考えています。

― 今回店頭に並ぶアイテムについて教えてください。 最初に完成したHi.seriesのスツールは、開発に約1年を費やしました。私たちからデザイナーの池内さんへの依頼は、板金加工されたパーツと木材とを組み合わせた家具を作りたいということと、森元が得意とする「建築板金加工」で可能な、金属の板を“切って、折る”という技術のみで作ることができるということでした。これらをかたちにして、互いに納得のいくものにたどり着くまでに時間が掛かりましたね。 時間を掛け完成した、座面の木材から1本の金属ラインが見えるデザインは、デザインとしても納得のいくものになり、家具としてもしっかりとした強度を持ったものに仕上がりました。使っているのは、1.6mm厚の薄い鋼板(こうはん)ですが、折ることでより強度が増しています。表現したいデザインのイメージを突き詰めていった結果、JIS規格に基づく試験で区分4の強度・耐久性をクリアするほど丈夫な家具を作ることができました。 Hi.seriesのカラーリングは3色展開で、コッパーは制作現場で見られる建築板金のイメージの色、ネイビーとホワイトは、森元がある山口県柳井市(やないし)の自然の色からインスピレーションを受けています。濃いめのネイビーは瀬戸内の海の色を、緑がかった優しいホワイトは山の色をイメージしています。 次に生まれたシェルフは、構成パーツとして、木材でできた柱と天板と隅木(すみぎ)という小さなパーツだけでできたプロダクトです。一般的なシェルフは、フレームの上に天板を置くというものが多いんですが、このシェルフは鉄板を2回折ることによって、幕板という補強のためのパーツを必要とせず、支柱と天板と隅木という最小限の構成パーツで成り立たせることができています。シェルフは一番初めに生まれたアイデアがこのかたちで、すぐに「これで進めよう!」と即決して完成したデザインです。 Fulcrumは、今現在、東北のお取り扱い店舗と山口県の本社でしか実物を見られないアイテムとなりますので、ぜひTHINK OF THINGSでご覧ください。

POPUP SHOP「Fulcrum」 期間:2024年3月14日(木)〜3月26日(火) 場所:THINK OF THINGS 1F CASE Fulcrum Fulcrumは、山口県で建築板金業を営む、昭和62年創立の有限会社森元が立ち上げたライフスタイルブランド。金属の屋根や外壁を施工する建築板金における「切る」「折る」といった最小限の加工のもと生み出されたプロダクトを展開しています。建築から家具へとアプローチを変えることで、同じ素材や加工方法を用いたものでも、まったく違った印象に感じられるアイテムです。 Website:mcollection.jp Instagram:instagram.com/fulcrum_jp

CASE Q&A

TOTのCASEで開催されるポップアップショップやイベントの参加ブランド・アーティストをより深く掘り下げる一問一答インタビュー。ものづくりのコンセプトやその背景、想いを探り、気付きを得られるようなインタビューをお届けします。