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SUPER PLANTS X THINK OF THINGS

Interviewer&Text: Mengyao LU, Xiaojun Shi

2024.6.15

中国・北京のデザイナーズブランドSUPER PLANTSとコラボレーションしたプロダクトをリリースしました。デザイン事務所兼インテリアグッズを扱うSUPER PLANTS(スーパープランツ)。SUPER PLANTSで普段展開されている商品は、植物をはじめ、植物と触れ合う時のリラックスした気持ちを、毎日の生活や仕事も取り組めるようなという想いのもと展開されたアイテムが特徴です。 THINK OF THINGSの佐々木拓・金井あき、そしてSUPER PLANTSの代表兼デザイナー、李习斌(LI XIBIN)さんと劉雨桐(LIU YUTONG)さんをお招きし、今回のコラボレーションについて振り返りました。

"Think of green,Work for plants" 植物に意識を向き、仕事に向き合う姿勢を柔らかくする コクヨ「THINK OF THINGS」が提供する製品群は、シンプルで使いやすい生活道具や文房具によって、生活をより快適にしています。また、「SUPER PLANTS」は「植物のために働く」というリラックスした姿勢を、使い手の生活や仕事に取り入れることを望んでいます。 このコラボレーションを通じて、植物の世話が自己のリラクゼーションの手段として提案される一方、日常生活や仕事においても、植物と共に楽しく、シンプルでリラックスできる環境を目指しています。

― まずはディレクターとして考えている、自社ブランドの魅力を教えてください。 李(SUPER PLANTS):SUPER PLANTSが一番大事にしていることは、デザイナーとしてブランドや商品を作るとき、消費者の欲しいものを提供するべきか、消費者のニーズを超えたものを提供するべきかということです。デザイナーは生活に対して細かく観察し、敏感に感じ取ることで、消費者が欲しいものを超えた新しい生活スタイルや考え方を提供するべきだと思っています。ただ植物を提供するのではなく、植物の知恵や特性を通じて、さらに多くのメッセージを伝えることを目指しています。 例えば、AI技術がますます成熟する世の中、単に技術の進化に対応し、AI技術を使って生活の問題を解決することだけではありません、デザイナーとしての私たちは、人間の本質に立脚して方向性を提供するべきだと思います。デザイナーとしての人間性を最大限活かして、より良い方向性の提案をすることが重要だと考えています。

― SUPER PLANTSとTOTの共通点として、クライアントワークと自社ブランド両方持っているスタジオですね。デザインのアプローチには違いがありますか? 李:基本的に私たちの思考は変わりませんが、クライアントワークでは見えない部分が多く、自由度が高まります。一方、自社ブランドでは、経営や製作の全体像が明確であるため、より冷静かつ制限された範囲でデザインを行います。自由な発想が求められるクライアントワークと異なり、自社ブランドでは失敗のリスクをより慎重に考慮します。 金井(TOT):私たちの場合、生活者のライフスタイルを提案することを目指しており、ほんの少しの視点の変化や提案によって新しい楽しみ方を提供できるようなコミュニティを作っていきたいと考えています。
 佐々木(TOT):金井さんが言ったことが大きなポイントです。コクヨがベースにある会社として、コクヨとの距離感をすごく意識しています。コクヨでありながらコクヨらしくないことを考え、領域を広げていくことを意識しています。最近は、他のクリエイターと協業し、クリエイティブな環境を作ることに興味があります。そう言う活動に広げられるといいなという思いから活動しています。

"園芸アイテムのシンプルなリデザインで暮らしをリラックスさせる" ― 今回のセレクションはどのように決めましたか 李:SUPER PLANTSでは、今回製品選定にあたり、既製品のグラフィックを活かすことを重視しました。ノートブックなど、動作を伴う商品を選び、グラフィックが最大限に映えるようにしました。 佐々木:TOTは元々業務用アイテムを見直し、暮らしに提案することを積極的に行ってきました。SUPER PLANTSも同様に、見慣れた既製品をシンプルに再提案しています。今回中国の業務用品を選定する際、働くシーンにフィットするアイテムを選び、グラフィックを生かせるものを優先しました。

THINK OF GREEN NOTEBOOK A4 〈SUPER PLANTSの作品解説〉 キャンパスノートの白い表紙にシルクスクリーン印刷を用いて、植物を植えるという行為を表現しました。 さまざまな行動に対応するグラフィックとカラーがあり、ページをめくると、植物を植える時のリラックスした気分を思い浮かべることができます。中国の農業でよく見かける尿素パッケージ(無機化合物から初めて合成された有機化合物)の文字配置を参考にし、「草取り」と「耕す」の文字はぎこちなさを出すために少し手を加えてあります。

― 今回のコラボレーションのテーマはどのようにして生まれましたか?特に工夫したデザインのポイントや、お互いが一番気に入っている製品はどれですか? 李:今回のコラボレーションで一番楽しかったのは、お互いの考え方や製品を共有しながらデザインする過程でした。THINK OF THINGSは仕事用の文房具を提供し、SUPER PLANTSは植物に焦点を当てた製品を提案しています。今回は「仕事」と「植物」というテーマをミックスしたことが新鮮で、その中で私が最も気に入ったのは手袋です。THINK OF THINGSのデザインを取り入れつつ、ミミズの模様を加えることで、機能性と面白さを兼ね備えた全く新しい雰囲気を出すことができました。使用すると、まるでミミズが動いているように感じます。

Work for plants GOROGORO WORK GLOVE ゴロゴロワークグローブ 手が包まれた安心感でごろごろしたくなるごろごろワークグローブ。植物のお手入れも、お掃除作業もゆらゆらとくつろぎの時間に。 手の保護はもちろん、文字やパターンの部分はゴム素材で滑り止めになっている、機能性のあるグローブです。

佐々木:LIさんと初めてコミュニケーションした時から、お互いの活動や考え方について深く掘り下げて話し合いました。その過程で自然とテーマが決まり、お互いの考え方に寄せてデザインするという新しい形が見られました。THINK OF THINGSの少し「硬派」なデザインに、SUPERPLANTSの「植物のある生活を豊かにする」柔らかなデザインと組み合わせることで、新しい形が見られました。私も手袋が面白いと思いました。金井さんはどうですか?
 金井:私も手袋が好きですが、あとSUPERPLANTSがデザインした事務用連絡袋も気に入っています。中国語の漢字だけで可愛く表現されていて、学ぶことが多かったです。

劉(SUPERPLANTS):ありがとうございます。今回のコラボレーションでは、日常の中で自然に近づく機会を増やすことを意識しました。仕事の中での小さな休息がリラックスに繋がるようなデザインを取り入れることが目標でした。具体的には、「作」という漢字の横の線を変えることで、視覚的な違和感を与えつつ目立たないよう工夫しました。これにより、仕事中に短いリラックスタイムを持つきっかけを提供できるといいなぁと思いました。 佐々木:TOTのアイテムは基本的に仕事用のツールですが、SUPER PLANTSからのリラックスというメッセージを組み込むことで、仕事に対するアプローチをより柔らかく、そして快適に変えることを目指しました。このアプローチにより、ユーザーは日常的に仕事に向き合う際の心地よさを感じることができ、植物がもたらす穏やかな影響を実感できるようになります。それが、このプロジェクトの一番の魅力だと思います。

"ツールと考え方のコラボレーション" ― THINK OF THINGSとSUPER PLANTSがコラボレーションすることになった背景ときっかけを教えてください。 李: 佐々木拓さんと金井さんのTOTプロジェクトには昔から注目していました。日本に行くたびに千駄ヶ谷の店舗を訪れ、コクヨのデザイナーとしての彼らの作品にも興味を持っていました。TOTビジュアルもずっと更新しているし、そのビジュアルの変化を見ると、常に非常に控えめな(ストイックの)状態(変化)を保っていると感じます。しかし、この控えめな視覚表現(ビジュアル変化?)は、いつも非常に強いサプライズ感ももたらしてくれています。 このサプライズ感は、派手なビジュアルや全く異なるビジュアルで表現からされた感覚ではなく、佐々木さんと金井さんが築き上げたTOTのビジュアルは、デザインのロジックを維持しながら、徐々に展開されているような、障子のような繊細さを持ち、障子を破るような大胆なアプローチよりも、美しさを透かし見せることで新たな道を切り開いています。この繊細なアプローチに深い印象を残りました。 TOTは書くためのツール、思考のツール、そして仕事のツールに対して優れたアイデアを持つチームで、私たちSPは植物に関連した商品を製作しており、この二つのブランドがコラボレーションすることで新しいアイデアが生まれるのではないかと思いました。一方は事務用や思考のための製品を、もう一方ではリラックスを促す植物関連の商品を作っており、この対照的な特性が非常に興味深く、異なるアプローチが可能だと感じています。

佐々木 :ありがとうございます。 自分たちのデザインについてですが、常に新しいものを作ろうとはしていますが、やっぱりベースはコクヨということで、コクヨの元と持つ良さを生かそうとしています。最近のプロジェクトでは結構過去の作品見直し、再編集するような作り方をしたりしているので、李さんがお感じになった通りかもしれませんね。 SUPER PLANTSのデザインについては、コラボレーションの話が出てからウェブサイトで詳しく調べました。そこにはたくさんのアイデアがあり、特に新しいと感じたのは、植物をグラフィカルでカジュアルなスタイルで提案している点です。デザインが素晴らしいだけでなく、植物を中心に展開している商品の多様性も非常にユニークだと感じました。 プロジェクトの始まりを詳しく覚えているわけではありませんが、SUPER PLANTSのことは以前から知っており、チーム内の中国出身の石さんから情報を得ていました。また、SUPER PLANTSはデザイン事務所を持ちながらクライアントワークを受け、ショップも運営しているという点で、TOTと似たような体制で活動していると感じました。そのような働き方に非常に興味を持ち、コラボレーションを始めたいと考えたのがきっかけです。 金井 :特にすごい気に入っていたのは、植物名をそのまま使わずに、今の暮らしに合わせた新たな呼び方をスーパープランズから中国の漢字だけでデザインして提供しているところが、すごく素敵だなと思っていました。

― コラボレーションプロセスで直面したチャレンジについて教えてください。 李:本当にデザイン自体はすごくスムーズに進めて、楽しかったのですが、どっちかって言うと、やっぱり国を渡ってのコラボレーションなので、輸送、税関などが一番難しかったです笑。手続きに時間がかかりましたね。大変でしたが、最終的にローンチできてよかったです。 ー 今後もコラボレーションする予定はありますか? 李 :まだ決まっていませんが、今回の経験が楽しかったので、今後もコラボレーションできたら嬉しいです。 佐々木 :今回のコラボレーションは双方でデザインし合うという新しい形でしたので、自分たちも新しい考えや体験をたくさん見つかって、すごく楽しかったです。まずは世の中に出して反応を見て、ぜひ第2弾を考えていければ思います。

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THINK OF THINGSが過去に行った独自のリサーチや限定ショップ、イベントなどこれまでの様々な活動について紹介しています。