CASE Q&A Like Vine
THINK OF THINGSの入り口にあるポップアップスペース“CASE”では、2月5日(木)より山形県西川町の伝統工芸「山葡萄つる細工」職人・伊東 広と、グラフィックデザイナーユニットpinkpepperによるコラボレーションアイテムのポップアップ「Like Vine(ライクバイン)」を開催しています。 今回のポップアップに併せて、ブランディングディレクターを務める磯部有規さんにコラボレーションの経緯やプロダクトについてお聞きしました。
ー プロダクトブランド「Like Vine」の背景について教えてください。 「Like Vine」は、山形県西川町(にしかわまち)の伝統工芸「山葡萄つる細工」を、より多くの方に知っていただき、新しい形で次世代へと継承していくことを目的に立ち上がった「Like Vine Project」から生まれたプロダクトブランドです。 プロジェクトの拠点である西川町は、山形県のほぼ中央に位置し、磐梯(ばんだい)朝日国立公園の朝日連峰やその支脈に囲まれ、東北の名峰・月山(がっさん)の麓に広がる自然豊かな町です。総面積の約95%が山地で占められ、町内には清流日本一ともいわれる寒河江(さがえ)川が流れるなど、里山ならではの四季折々の風景を感じることができます。 また冬には、町の中心地でも1m、山間部では5mを超える積雪がある、県内でも有数の豪雪地帯でもあります。そのため、家の中で過ごす時間が長くなり、林業や農業に携わる人たちの中で、古くから冬の手仕事として「山葡萄つる細工」が受け継がれてきました。 近年、かつては何十人もいた職人が数人となるなど、担い手の減少をはじめとしたさまざまな課題も抱えています。この貴重な技術や知識、そして生活文化を次世代につないでいくため、まずは「山葡萄つる細工」を知っていただき、従来とは異なる場所や文脈の中で、多くの方の目に触れるきっかけをつくりたいと考えました。 今回のポップアップでは、実際にプロダクトを手に取っていただきながら、工芸品の魅力や、その背景にある物語を感じていただけたらと思います。
ー「Like Vine」という名前の由来について教えてください。 “Vine”は、「山葡萄のつる」を意味します。山葡萄のつるは、周囲の植物と絡み合いながら上へ上へと伸び、やがて花を咲かせ、実をつけ、風景を豊かに彩ります。その姿は、異なる分野の人たちが手を取り合いながら、新たな価値を生み出していくプロセスとも重なります。このブランドが「山葡萄のつるのように、しなやかに広がり、成長していってほしい」という想いを込めて、「Like Vine」という名前を付けました。 西川町に受け継がれてきた伝統工芸「山葡萄つる細工」と、異業種の作り手との協働を通じて、新たな魅力や可能性を見出し、その技術と知識を次世代へとつないでいきたいと考えています。
ー 今回のコラボレーションについて教えてください。 今回のコラボレーションは、“山葡萄籠発祥の地”ともいわれる大井沢地区の中でも、特に高い技術を持ち、美しい仕上がりの籠で知られる、つる細工職人・伊東広さんとの取り組みからはじまりました。伊東さんは、材料採取から制作に至るまで、すべてを一人でおこない、丁寧な仕事で高い品質の籠を作られています。その価値をどのように現代のライフスタイルや感性とつないでいくかを考えていく中で、今回コラボレーションするにあたり着目したのが、布アイテムです。 手間ひまをかけて丹念に編まれる「山葡萄つる細工」の籠は、必然的に高価なものとなります。それは、同じく職人の手によって生み出され、日用品でありながら大切に扱われてきたハイブランドのバッグとも重なるところがあります。バッグの持ち手にスカーフを巻き、持ち手を守りながら、装いの一部としても楽しむさまは、山葡萄籠にも通じるものがあると感じました。 また、スカーフは本来、防寒や日除けのために身に着けられてきた生活の道具でもあります。それらは、山葡萄の籠を手に、ほっかむりをして暮らす町のおばあちゃんたちとも重なり、「伝統」と「ファッション」、「実用性」と「装い」が交差するイメージが今回の企画となりました。
布アイテムを用いて、ファッションとしての視点でプロダクトを展開していくにあたり、スカーフ制作をはじめとしたプロダクトブランド「pinkpepper」として活動されているグラフィックデザイナーの栗原あずささん、𦚰田あすかさんにご一緒いただき、プロジェクトを進めていくことになりました。お二人とは、企画段階からアイテムの詳細やデザイン、ブランドの見せ方まで、丁寧に打ち合わせを重ねながら制作を進めていきました。 さらに今回は、ファッションブランドのようにモデルを起用し、スタイリングやビジュアル表現にも力を入れることで、これまでの工芸の枠にとどまらない、既視感のない新しい世界観を目指しました。
ー 今回のコラボレーションアイテムについて教えてください。 今回のポップアップは、「Like Vine」にとって、初となるアイテムのお披露目となります。大井沢の籠の特徴である、緻密で美しく、力強く編み上げる技法を活かしながら、これまでにない試みとして、横長の本体に長い持ち手を組み合わせた新しいシルエットの籠を伊東さんに制作していただき、pinkpepperさんには、その籠に合わせて使えるインナーバッグを制作いただきました。インナーバッグは、持ち手部分の布を結び、籠から垂らして見せることで、荷物を隠す機能性と装いとの両方を楽しめる仕様になっています。
もうひとつのコラボレーションアイテムは、pinkpepperさんによる大判スカーフと、それに合わせて制作した「山葡萄つる細工」のスカーフリングです。大判スカーフは、pinkpepperさんにとっても初となるサイズと素材を採用し、透け感のある軽やかな表情のアイテムに仕上がりました。スカーフは、2025年の夏にお二人が西川町を訪れ、そこで目にした景色や感じた空気をもとに、西川町に咲く野の花、森、光のイメージを重ね合わせた「mingle」、西川町の森に差し込む光をイメージした「sunlight」というコンセプトで、それぞれデザインいただきました。山葡萄のつるの樹皮をそのまま用いたスカーフリングは、節(ふし)や曲がりなどが一点ずつ異なり、それぞれが唯一無二のものになっていますので、ぜひお好みのかたちをお選びください。 「山葡萄つる細工」は、使い込むほどに色合いが深まり、ともに過ごした時間を映すように変化していきます。とても丈夫で、世代を越えて受け継ぐことのできるものだからこそ、生活の道具として日常的にお使いいただき、長く愛でていただけたらと思います。 POPUP「Like Vine」 会期:2026年2月5日(木)~ 2月10日(火) 場所:THINK OF THINGS 1F CASE Like Vine Project 山形県西川町の伝統ある「山葡萄つる細工」を、新しい形で次世代に継承していこうと立ち上がったプロジェクト。山葡萄のつるが他の植物と絡み合って上へ上へと伸び、花を咲かせて実をつけ、景観を彩るように、つる細工の職人と異業種の作り手とがともに手を取り合うことで、新たな光景を描いていけることを目指している。 Instagram:@like_vine__ 山形県西川町 つる細工職人 KOGUMA 伊東 広 1990年生まれ。長崎県出身。世界30カ国以上を旅し、帰国後に訪れた山形県西川町大井沢で雪国の暮らしに触れ、感銘を受ける。なかでも山葡萄のつる細工や、わら細工などの手仕事に強く惹かれて、移住を決断。地元の職人から手ほどきを受け、現在は築113年の古民家で暮らしながら制作、時折ゲストハウスの運営もおこなう。2023年〜25年、日本民藝館展入選。 Website:https://koguma-o.com/ Instagram:@__ko_gu_ma__ pinkpepper デザイナー 栗原あずさ・𦚰田あすか pinkpepperは、グラフィックデザイナーの栗原あずさと𦚰田あすかが手掛けるテキスタイルを中心としたプロダクトブランド。着こなしのアクセントになるような、グラフィカルなデザインが特徴。身に纏えるグラフィックとして、毎シーズンごとにスカーフを制作・発表している。ブランド名には、日常にちょっとした遊び心を加えてくれる“小さなスパイス”という意味が込められている。 Instagram:@2016pinkpepper








