CASE Q&A モリタ株式会社
THINK OF THINGSの入り口にあるポップアップスペース“CASE”では、9月17日(木)より札幌の紙箱メーカー、モリタ株式会社によるポップアップ「HAKOMART 2026」を開催しています。今回は、モリタ株式会社代表の近藤篤祐さんにHAKOMARTを立ち上げた経緯や今回のポップアップについてお聞きしました。
ーモリタ株式会社について教えてください。 モリタ株式会社は、札幌市の紙箱を作る会社です。1932年に創業し、今年で95年目を迎えました。初代が札幌市内の大きな百貨店から「贈答用に使用するパッケージを作って欲しい」と依頼を受けたことがきっかけとなり、モリタが生まれました。百貨店の衣類や食器、食品などの箱製造から始まり、ホテルのコーンスープやケーキ箱の依頼も増え、後に高度経済成長期におけるお歳暮・お中元文化のピークもあって、札幌で数多くの贈答用の箱を製造してきました。 バブル崩壊を経て2000年代に入るとお歳暮・お中元文化が衰退し、それまで順調に成長していた会社も斜陽期に入り、大きな転換を迫られる時代を迎えました。箱業界の中でも比較的小規模の工場を持つモリタがどう生き残れるかと思案した時、大量生産や機械化を目指すのではなく、ギフトボックス製造の強みを活かしながら、手加工、多品種生産のものづくりを徹底していこうと決意したのが、現在のモリタの始まりです。 世の中に多く流通する箱との差別化を図るため、札幌では作られていなかったVカットボックスの製造を開始したり、デザインへの理解を深める必要があると感じ、私自身が夜間のデザイン学校に通ったりと研鑽を重ねました。その結果、さまざまなクリエイターの方とタッグを組み、素材のブランディング化や自社プロダクトの販売、今回のHAKOMARTの取り組みなど、多種多様な仕事を実現させていくことができました。
ーHAKOMARTとはどのようなプロジェクトですか?また、HAKOMARTの開催を経て、モリタ株式会社にはどんな変化があったのか教えてください。 「HAKOMART」は、紙箱メーカーであるモリタの加工技術と、クリエイターの自由な発想から生まれる箱の展示・販売イベントです。2012年から2018年にかけて開催し、8年間の休止期間を経て、今回「HAKOMART 2026」開催に至りました。 HAKOMARTの立ち上げのきっかけは、伝説の「箱飲み」から始まりました(笑)。札幌のクリエイターさんと少しずつ交流を深めていく中で、イラストレーターの前田麦さんや「NEVER MIND THE BOOKS」の主催者でデザイナーの菊地和広さん、小島歌織さんらとともに、各自のとっておきの箱を持ち寄って誰が一番良い箱を持っているかを競い合う「箱飲み」を札幌の居酒屋さんでサブカル的に開催していたんです。 1年ほど続ける中で、気づけば、さまざまなクリエイターの方々とつながる機会にもなっていきました。そんな中「箱飲み」の発案者である前田さんから形を変えて展覧会として発信してみてはどうかと提案をいただき、2012年、第1回「HAKOMART」を札幌市内で開催することになったという経緯があります。実際に開催してみると大変好評で、それから6年間にわたり毎年10名ほどのクリエイターに参加いただき、合計約70作品もの多様な箱を製作・展示しました。 HAKOMARTを通して、モリタにも多くの変化があったと感じています。一つ目は、札幌市内でユニークな箱を作る会社としての認知が広まり、デザイン業界からも、多くの新規のお仕事をいただけるようになったことです。ありがたいことに様々な依頼が増えたため、工場のキャパシティ的にHAKOMARTの定期開催が難しくなってしまったことが休止の理由でもあります。二つ目は、社員のレベルアップやものづくりに対する意識の変化です。難易度の高い箱作りが、HAKOMARTの会場でも高く評価され、社員のモチベーション向上にも繋がりました。また、HAKOMARTをきっかけにモリタを知った学生さんが若手社員として入社してくれたりと、それまでベテラン中心だった会社の雰囲気が変わったのも、非常にプラスな変化でした。
ー8年ぶりの開催となる今回の「HAKOMART2026」について教えてください。 コロナ禍を経て、2〜3年前からずっと復活させたいと考えていました。やはり受託の仕事だけでなく、ゼロから何かを生み出すことで得られる良さや以前の感覚を思い出して取り組んでいかないと会社がマンネリ化してしまうなと感じていたんです。 HAKOMARTでは毎年テーマを設定しており、8年ぶりの今回は「のこす」をテーマに掲げました。11組のクリエイターの方々が、それぞれの視点で未来に残したいもの、記憶に残るもの、手元に置き続けたいものを「箱」という形で表現しています。 「のこす」というテーマは、迷いに迷って、最後に思いついたんです。紙や印刷など我々の業界周辺のものは今間違いなく減ってきている、ゆくゆくは日本の文化がなくなると言ったら言い過ぎですが...ペーパーレスの世の中で箱もいずれなくなる可能性があるなという危機感があります。まずは紙そのものをしっかりと残していきたいという思いから始まり、箱も、モリタも存続していかなければならないという強い想いもあり。当然のことながら、箱には中に物を入れて残す役割があります。デジタル消費とは異なり、箱を通して実物を手元に残すことの大切さを伝えられたらという思いから、今回のテーマを決めました。 今回ご参加いただいた11組のクリエイターの皆さんによって、多種多様で魅力的な作品が揃いました。この11種類の紙箱をご覧いただくだけでも、箱の可能性やこれからの未来の箱について、体感していただけるのではないかと思います。
ー最後に、HAKOMARTならびにモリタ株式会社の今後の展望についてお聞かせください。 今回は巡回展として、10月8日(木)よりモリタ株式会社の拠点でもある札幌の「グランビスタギャラリー サッポロ」でもHAKOMARTを開催します!札幌会場では東京とは少し異なる展示構成の予定ですので、機会がありましたらぜひお越しください。 また、HAKOMARTの今後の展開として、日本の優れたデザインや箱の文化を海外の方々に知っていただきたいという思いから、いずれはニューヨークで展示できたらと思っています。最近では少しずつ海外からの依頼もいただけるようになり、海外進出はモリタが目指しているビジョンのひとつです。 さらに、具体化はこれからですがオープンファクトリーを開設したいなと思っています。北海道には観光で訪れるインバウンドも多く、デザインや雑貨、紙に興味のある方々が立ち寄れるような、展示やコミュニケーションスペースを併設した拠点を創ることが次の目標です。 HAKOMART 2026 (TOKYO) 会期:2026年9月17日(木)~9月29日(火) 場所:THINK OF THINGS 1F CASE ※9/23(水)は祝日につき営業します。 参加作家(敬称略): 大坪メイ・柿本萌・KANAISASAKI (金井あき/佐々木拓)・川尻竜一・新林七也・田中良治・陳文亮 wenliang.C・寺島賢幸・西本未祐・ピチクパチク×HACOYA・前田麦 企画/展示構成:近藤篤祐(モリタ株式会社)・新林七也 主催:モリタ株式会社 Website: https://www.hakop.jp/ Instagram:@morita_package








