2025.07.13

CASE Q&A Kankyō Records

CASE Q&A Kankyō Records

THINK OF THINGSの入り口にあるポップアップスペース“CASE”では、7月3日(木)から「Kankyō Records」のポップアップ「Ambient Things」を開催しています。今回は、Kankyō Recordsのオーナーであり音楽家のH.Takahashiさんに、Kankyō Recordsをはじめた経緯やカセットテープの魅力についてお聞きしました。

ー建築と音楽の二つの軸を持って活動されるようになったきっかけを教えてください。 建築事務所に勤めながら、空間との結びつきが強いアンビエント(環境音楽)に興味を持ち、過去のCDやカセットテープを聴き始めたのがきっかけで音楽を始めました。 当時は、過去の作品を掘り下げるかたちでアンビエントに出会うことがほとんどでしたが、2014年ごろから現代の作家さんがアンビエント作品を発表し、カセットでもリリースされるのを見かけるようになりました。その流れに刺激を受けて自分でも作りたくなり、建築の仕事の合間や通勤時間にスマートフォンで音楽を作り始めたんです。 その後、音源を聴いてくださった方が自分のレーベルからリリースしたいと声をかけてくださり、幸運なことにカセットテープを何本かリリースすることができました。ちょうどその頃に建築の仕事でも独立を決め、音楽と建築の両軸で本格的に活動するようになりました。 ーKankyō Recordsを始めた経緯について教えてください。 個人で設計事務所をはじめると、社会との接点が少なくなってしまうような感覚がありました。音楽レーベルの方々との繋がりも増えて、設計事務所をいろんな人が出入りできる場所にできたらいいなと思うようになったんです。それから、什器の設計も含めて空間を少しずつお店として整えていき、今のKankyō Recordsに発展しました。 個人的に集めていたカセットもお店として販売できるくらいの量があったので、なんとなくお店のビジョンが見えていたのもKankyō Recordsをはじめた理由のひとつかもしれません。

ーH.Takahashiさんの思うカセットテープの魅力についてお聞きしたいです。 カセットって、良くも悪くも“物”なんですよね。物ならではのブレというか、「ちゃんとここに存在している」とわかるリアリティのある感じが魅力だと思っています。 2010年代に、改めてカセットカルチャーに触れた時、物としての良さはもちろん、仲間内でつくられたような、ちょっと部活っぽいなんともいえないデザインがとても面白く新鮮でした。人の手で作られたもので、大量生産ではない感じがアーティストから直接手元に届いたような気持ちにもなるんです。 あとは、データだと消えてしまう可能性もあるので、やっぱり“物”として残しておくことが、音楽に限らずいろんなことにおいて大事なことなんじゃないかと思っています。そこも含めて、カセットの魅力ですね。

ー今回のPOPUP「Ambient Things」について教えてください。 今回のポップアップでは、音の良さはもちろん、ジャケットのアートワークが特に印象的なレコードやカセットを中心にセレクトしました。ウェブサイトで沢山並んでいるカセットやレコードを見ていてもアートワークが良いものは、目に留まって聴いてみようかなという気持ちになります。ジャケットのアートワークの良さやセンスは、音ともとても共通している気がするので、その点も注目いただけたらと思います。ポップアップ期間中は、店内で流れている音楽も、販売しているカセットやレコードからセレクトしたプレイリストになっています。ぜひ耳を傾けてみてください。 また、Kankyō Recordsから発行している雑誌「HOJO」の第3号をリリースします。環境音楽を長らく牽引されてきた音楽家である尾島由郎さんに、環境音楽の過去、現在、未来についてお話を伺った巻頭インタビューにはじまり、新進気鋭のデザイナーTakuto Okamoto さんに音楽とグラフィックデザインの関係性について伺うなど、これまでの連載企画も含め、去年よりボリュームアップした特別号です。音に近い住空間や家具、香り、デザインなど、今後は音楽だけに留まらない雑誌にしていきたいという思いもあり、実験的に今までと異なるベクトルの方々にもお話を聞いた回となりました。

ーKankyō Recordsまたは、H.Takahashiさんの今後について、お聞きしたいです。 デザイナーの大澤悠大さんと音楽家のTatsuro Murakamiさんと新しくプロダクションというか、事業を立ち上げようとしているところです。これまでKankyō Recordsの枠組みの中でやっていたことを先鋭化させて、映像や空間のための音楽を制作したり、公共空間の駅や空港の音を作ったりする仕事に積極的に取り組んでいきたいなと思っています。加えて、リスニングルームを作るなど、複合した仕事をやっていけたらと考えて準備を進めています。

POPUP Kankyō Records「Ambient Things」 会期:7月3日(木)〜 7月22日(火) 場所:THINK OF THINGS 1F CASE H.Takahashi 東京を拠点に活動する作曲家/建築家。2021年よりレコードストア Kankyo Records を運営。作曲家として、UKの Where To Now?、USの Not Not Fun、ベルギーの Dauw や Aguirre、日本の White Paddy Mountain など、国内外のレーベルからアンビエント作品をリリースしている。 また、やけのはら、P-RUFF、Yudai Osawaと共にライブユニット UNKNOWN ME としても活動。さらに、Atoris 名義でのソロ活動に加え、2024年にはAtorisで共に活動する Kohei Oyamada との新ユニット H TO O を始動。デビューアルバム『Cycle』をUKの Wisdom Teeth よりリリースした。 Instagram:@h.t.a.k.a.h.a.s.h.i Kankyō Records Instagram:@kankyo_records