CASE Q&A Nomadic
THINK OF THINGSの入り口にあるポップアップスペース“CASE”では、11月20日(木)からデザインコレクティブ「Nomadic」のポップアップ「Small on Small」を開催しています。今回は、Nomadicのメンバーのみなさんにコレクティブ立ち上げの経緯や今回のPOPUPについてお聞きしました。
ーNomadic(ノマディック)とはどんなコレクティブなのか、お聞きしたいです。 Nomadicは2022年の終わり頃に結成したデザインコレクティブで、現在、笠松祥平、品川及、前田怜右馬、福島拓真の4人のメンバーで活動しています。それぞれ作品へのアウトプットの形は全く異なるのですが、全員がコクヨのプロダクトデザイナーであるというバッググラウンドを持っているため、量産品のデザインでは議論できないものづくりを行う場としてNomadicでの活動があるのかなと思います。 普段の仕事では、特定の環境で特定の機能が際立つようなデザイン、決まった用途やシステム化された製造工程を持たせるメーカーとしての製品開発を行っています。そこで議論できないものづくりは、特定の環境だけで機能するものというよりも、用途が何かは少し後に置いた環境に応じて変容していくものづくりだと考えています。 どんな環境に置かれても、変容を重ね適応できる生き物が絶滅しないのと同様、変容していくものづくりこそ「生きのびるためのデザイン」であり、この言葉がNomadicの根底にあります。 Nomadicのメンバーそれぞれの作品は、どれも一義的な用途や形を持たずにデザインしています。それぞれの持つメソッドが重要であり、人や環境に応じて見え方やあり方、使い方が様々になっていく余白を持ったデザインがNomadicの特徴と言えるのではないでしょうか。 正直、Nomadicとはなにかという問いの返答については私たち自身もはっきりと言葉にするのが難しいところがあったのですが...今年はありがたいことに今回で3つ目の展示開催で、メンバー同士の活発な議論や言語化も重ねていくうち、ようやくピントがパシッと合ってきたような、活動の点が線になっている感じがしています。
ー今回のPOPUP「Small on Small」について、それぞれ教えてください。 今回は、THINK OF THINGSのポップアップスペースである「CASE」のスケールに着目しました。CASEがとてもコンパクトな空間であることから、お客さんと作品との距離がとても近くなるような印象を受け、場所性を変容の余白として取り入れました。具体的には展示タイトルを「Small on Small」と題して、各々が作品やメソッドをシンプルに小さくしています。 前田さん 私の作る漆が時間とともに硬化し堅牢性を増していく特性に着目した作品「KACHI KACHI」は、コットンロープに漆を塗り重ね、一部を固めて形づくられています。硬化した部分はカチカチに、未加工の部分はしなやかに残り、一本の線の中に剛性と柔軟性が共存します。空間に曲線を描く造形でありながら、フックのように物を掛けるなど、生活の中での使用も想起させます。 今展示では、“small on small” をテーマにロープを短くカットしたシリーズを展開しました。漆で固めたロープを切断すると断面を起点に自立する特性が現れ、短いロープは置かれた物体を貫くような錯覚を生みます。複数を組み合わせることで、出入りを繰り返す長いロープのようにも見えてきます。こうした試みにより、ロープと空間の関係にささやかな違和感や不思議さが立ち上がり、オブジェクトでありながら玩具のような佇まいをもつ作品群が生まれました。
福島さん 私は円を傾けてできる楕円のオブジェクトシリーズ「Tilt」を作っています。 円は斜めから見ると楕円になります。 この当たり前な原理から必然的に作られる形状は歪で正確普通でありながら非凡な佇まいを魅せてくれます。これらを形にする行為は「河原を歩いてお気に入りの石を拾う」行為とよく似ています。自然のルールに従って無数に生まれるモノの中から自分の琴線に従って掬い上げる。それを持ち帰り、どう使用するか対話を繰り返す。それぞれの形にその都度、使い方、作り方、仕上げを決めていきます。 「Small on Small」ではスケールの縮小によって一度決めた使い方の可能性を広げるオブジェクトを展開しています。
品川さん 排泥鋳込みという、石膏型に泥状の土を流し込む製法を用いたセラミックシリーズ「Assemble」を制作しています。 このシリーズは、均質な形をつくるための工業的な手法として一般的に用いられる排泥鋳込みの工程に、組み替え可能な型を導入しています。規格化されたブロック状の石膏型を制作し、その組み合わせ方を都度変化させることで、多様な形状の造形を可能にしており、必然的に個体差が生まれるような作品となっています。 「Small on Small」では、スケールを縮小することで見出される新たな用途や、それに伴って生まれる多様な形状を展開しています。 また、複数を組み合わせて配置することで、ミニチュアのように見立てることができ、ひとつの景色として楽しめる作品群となっています。
笠松さん 紙で照明を作る、実践のプロセスを日記的に記録したブックレット「LIGHT-PAPER」を販売します。 この本を手にした人の実践の変容の可能性を潰さないために、レシピ的で結果を再現してもらうような渡し方ではなく、あくまで一人の実践の道のりをただ残すような形式を取っています。 「Small on Small」では、コンパクトなLED光源を用いて、最小限の紙の構成で照明を制作しました。スモールスケールであることは、実践をより容易にし、生活へ置くという点でもさらに多様な在り方を叶えます。
ーNomadicの今後について教えてください。 Nomadicは、メンバー4人で考えていることはとても近いのですが、それぞれが個人で作品をしっかりアウトプットしています。しかも結構純粋にプロダクトに起こしているので作品性がかなり強いなと思っています。そういう意味でももっと生活に実装されるってどういうことかを考えていきたいです。単純に言うと、スタジオワークと空間作りに領域を広げていければと思っています。プロダクトを作るNomadicの考えが実装された生活空間ってどういうものか、やっぱりものだけの話だと限界があるので、空間レベルで何か作っていきたいですね。 あとは、デザインイベントに出展する機会が多かったので、これからは自主的な活動を発信できる形態をとっていけるといいのかなと思っています。実際に生活に実装する空間として個展的に見せるのか、スタジオワークとして発表していくのか、手段はまた議論しながら自主発信をもっとしていきたいです。 POPUP Nomadic「Small on Small」 会期:2025年11月20日(木)〜 12月2日(火) 場所:THINK OF THINGS 1F CASE Nomadic 笠松祥平 1996年北海道生まれ。京都市立芸術大学卒業。家具・照明の制作、完成品のみではなくメソッドの共有としてのブックレットを制作。 品川及 1998年東京都生まれ。多摩美術大学卒業。型を用いたセラミックの作品を主軸に、量産とクラフトの中間のあり方を探る。 前田怜右馬 1993年東京都生まれ。東京藝術大学卒業。素材の特性や文化を捉え直し、それまでの文脈をずらす表現を模索。固定化した領域を拡張・代謝するオブジェクトを展開。 福島拓真 1998年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学卒業。日々の観察の中で、未知と日常の往来とその繋ぎ目に興味を持ち、それらの可能性を探るオブジェクトを制作。 website:https://nomadic-collective-jp.com Instagram:@_nomadic_collective_








